健康診断のおはなし

さて、12月に以下のようなニュースがありました。


健診受けないと賞与減 直属の上司も 来年度からローソン

 コンビニエンスストア大手のローソンが、健康診断を受けない社員の賞与を
15%減額する異例の制度を、来年度から導入することが23日分かった。
直属の上司も10%カットする。多忙を理由に健診を受けず、
健康を害して仕事を続けられなくなるケースを減らすのが狙いだ。
 企業の医療費負担の軽減にもつなげたい考えだ。2013年度中に健診か、
人間ドックを受けなかった社員とその上司について、14年度の賞与を減額する。
 会社の健診を仕事の都合で受けられない場合も、会社の費用負担で別の日に
受診できるため、どんなに忙しい職場でも健診を受けることは可能とみている。
厳しいペナルティーを科すことで全員の受診を目指す。
 ローソンでは、11年度の健診受診者が約83%にとどまった。
「社員の健康管理のため社としてすぐ行動すべきだ」(担当者)と判断したという。

2012年12月23日 共同通信


みなさんはこの記事を読んで、どのような感想をもたれましたか?
労働安全衛生法は事業主に定期健康診断を義務付けており、
怠れば罰則があります。
そのためにも健診率を上げようという試みのようです。
しかし、「多忙を理由に」
「どんなに忙しい職場でも検診を受けることは可能」
ということは、検診を受けない人の一番の理由は、
仕事が急がしい、ということのように思えます。
その場合、事業主がまずするべきことは、
忙しい社員に「受診しなければ賞与を減らす」という
脅しをかけることではないはずです。
健康診断を受けやすい労働環境を整えることですね。
多忙ならば、人員を増やしたり、仕事をシェアしたり
適切に労働時間や業務内容の管理をすることです。
また20代30代の若い社員など健康診断の必要性を感じにくい世代にも
進んで受けてもらえる工夫をすることなどです。

また、健康診断自体が労働者の健康管理といった
本来の意味を失ってしまっている場合もあります。
健康に何らかの問題を抱える労働者であっても
会社が実施する健診では、問診などに正直に
答えない場合があります。
会社側に不調である事を知られると
雇用や人事の問題に影響すると考えられるからです。
ましてや、昨年労働安全衛生法の改正点にあがった
健康診断時のメンタル不調の把握は
労働者にとって雇用問題に直結します。

労災の過重労働による疾患の事案では過去の健康診断の記録も
検証されますが、1年に1回の形式的な健診では
特にその方の体調不良を示す記録が出てこないことが多いです。
労働者は正直に健診で不調を訴えることが少ないからです。
健康診断は、ただ受けさせればよいものではありません。

保健師さんなど健康管理の担当ををおき、
健康診断結果について事業主には通知せずに本人のみにとどめたり、
個別に面談指導をおこない、そこから本人の了承の上で
事業主に必要な情報を通知するようなシステムも
とることができます。

記事からはローソン社の内部の状況ははっきり分かりませんが、
罰則ではなく、労働者が健康診断を受けやすい環境を整え、
また健診によるメリットがあるように工夫していただきたいものです。
それが、労働安全衛生の管理姿勢の基本ではないでしょうか。