厚労省は独自判断で企業名公表を

過労死で労災認定された企業名の開示について、争っていた行政訴訟の2審で
1審の開示決定を取り消す判決が出て、判断が逆転しました。


<過労死企業名>不開示は適法 大阪高裁、1審判決取り消す
毎日新聞 11月29日(木)

従業員が過労死などで労災認定された企業名を不開示とした国の決定は違法として、
「全国過労死を考える家族の会」の寺西笑子代表(63)が開示を求めた訴訟の控訴審で、
阪高裁は29日、国に開示を命じた1審大阪地裁判決を取り消し、
不開示は適法として原告の請求を棄却した。山田知司裁判長は「開示で社会的評価などが低下し、
利益を害されることがあり得る」と述べた。原告は上告する方針。

山田裁判長は労災認定について「それだけで使用者に過失、法令違反があることを意味しない。
労働者の個別の事情の影響もある」と指摘。1審判決を巡り、インターネット上に
ブラック企業は開示したほうがいい」という内容の投稿が集まったことなどから、
「労災認定だけで社会的には否定的に評価される」と述べた。

また「大阪労働局の労災処理経過簿に記録された法人など621のうち、
従業員30人以下の企業は約42%あり、このような規模の企業では被災労働者個人の識別が容易だ」
と言及。こうした点から、企業名は情報公開法の「不開示情報」に当たると判断した。

原告側は09年、大阪労働局に02〜08年度の労災補償給付の企業名などの開示を求め、
不開示とされたため提訴していた。寺西代表は「高裁判決は企業を擁護するばかりで、
過労死で失われた命のことは書かれていない」と批判した。【坂口雄亮】

http://mainichi.jp/select/news/20121130k0000m040078000c.html


裁判長は、「開示で社会的評価などが低下し、利益を害されることがあり得る」
と述べたそうですが、それはその企業に対する正しい評価なので、
隠すほうが反対に社会に害を及ぼすのではないでしょうか?
学校の先生が推薦して就職した企業で元生徒さんが亡くなって
先生はそんな企業を勧めてしまったことでずっと自分を責められているとか、
そういう例もあります。
ただ小規模の企業で被災者が特定される可能性はありますので、
被災者への配慮は必要です。
この問題の解決策は、厚生労働省自らが
自分たちの判断で毎年企業名を公表するようにすることです。
現在もアスベスト疾患で労災認定のあった企業名は毎年公表しています。
今年は11月28日に発表があり、全国労働安全衛生連絡会議や
中皮腫アスベスト疾患・患者と家族の会などで
全国一斉ホットラインを行いました。
ホットラインには2日間で180件もの相談が寄せられました。
自分や家族がかつて勤めた会社の名前を労災認定事業所一覧に見つけて
電話をかけてきた人も多くありました。
これは、アスベスト疾患が曝露から何十年後に発症する遅発性疾患であるため
現在発病している病気と職業との関連性が分からないでいる人が多くいるためと、
アスベストの取扱い企業が分かるために近隣曝露の可能性にも
気づけるようにということで厚生労働省の判断で公開しています。
過労死企業については目的はアスベストとは異なりますが
同じように厚生労働層の判断で公開することは可能です。
過労死企業の公表は、やはり当該企業への罰の意味が強いですが、
加えて企業へ労務管理の改善を促し、
求職中の人に対しては警告になるので
予防にも貢献することが出来ます。
厚生労働省がいくら指導してもなくならない過重労働について、
企業名を公開するだけでいくらか歯止めになるのですから
厚生労働省はぜひやるべきでしょう。
厚生労働省の判断でやるのですから、従業員数30名以下の企業名は
非公開にするとか柔軟にできるはずです。
過労死は命の問題です。
厚労省は決断すべきでしょう。