労組や同僚の支援で逆転労災認定

昨年10月に精神障害の労災認定率について、都道府県によって
開きがあるという話を書きました。
大阪での記者会見のときに、本来認定されるべきであるのに
不支給となった事例として紹介した事案が、
審査請求で不支給処分取消、労災認定となりました。


労災:退職強要、労災認める 元会社員うつ、「不認定」取り消し−−大阪・泉大津労基署
毎日新聞 2014年01月24日

配置転換された上、長時間の面談で退職を求められた大阪府内の30代の元会社員のうつ病発症について、
労災と認めなかった泉大津労働基準監督署の処分が、不服審査で先月取り消されたことが分かった。
面談は録音されており、労基署はその提出を受けながら退職強要でないと判断していたが、
審査結果を受けて労災認定した。

元会社員を支援した関西労働者安全センターは「労基署は録音を無視し、会社側の言い分をうのみにした」
と批判した。泉大津労基署は「個別事案についてコメントできない」としている。

不服審査の決定書によると、元会社員は2008年に衣料メーカーに入社したが、11年5月に子会社の
物流会社に配置転換された。1カ月後、上司から面談で退職を求められ、拒否しても
「決着するまでテーブルを離れない」と言われた。その後うつ病と診断された。

労働組合の助言で元会社員は面談を録音していた。しかし労基署は、面談が長時間になったのは退職の勧めに
元会社員が明確に答えなかったためだと、会社の説明に沿って判断し、昨年2月に不認定を決めた。
一方、不服申し立てを受けた大阪労働局労災保険審査官は録音などを基に、元会社員が働く意思を明確に示し、
体調不良を訴えても面談が続いたと認め、配置転換や退職強要でうつ病を発症したと判断した。

センターによると、録音などでは面談は3時間半に及び、元会社員はその後倒れたが放置され、
同僚によって救急搬送されたという。

退職強要が精神障害の要因になったかが争われた労災案件について、2012年度に全国の労基署が
決定した31件のうち、認定は8件。センターは「退職強要は心理的負担が強いのに認められない傾向がある」と
改善を求めている。【大島秀利】


業務上の出来事では「子会社への配置転換」と「退職強要」がありました。
「配置転換」では、受けないと退職しかない状況で、これまでのキャリアとまったく関係ない
現場仕事に就かされました。
これに対する泉大津労働基準監督署の評価は
配置転換後の仕事が単純作業なので心理的負荷は「弱」としました。
「退職強要」は2回ありました。
配置転換からわずか1ヵ月後、新しい仕事でがんばろうとしているところへ
「退職してほしい」と言われました。
次の面談では「退職しない、今の仕事をがんばる」と言ったにもかかわらず、
上司2人に「決着がつくまでテーブルを離れない」と3時間以上
責められました。
本人は何を言っても上司に否定されるので次第に頭が真っ白になり
最後は救急搬送されました。
労働基準監督署の判断は「明確に答えなかったために面談が長引いた」
「正当な理由があり、退職強要とまで言えない。」
として負荷は「中」そのため総合判断が「強」となりませんでした。

この事案は精神科の専門医3人の協議会にかけられたのですが、
専門医の判断能力に疑問があります。
「配置転換」については仕事の内容と本人の能力とのギャップも評価することになっています。
「職場のパワーハラスメントの予防・解決にむけた提言」でもパワーハラスメントの定義として
「過小な要求」として上げられています。
能力にあわない雑用や単純作業を命じる行為のことです。
そして面談については録音データを聞けば、退職強要は明白だったわけですが
会社の言い訳を鵜呑みにして、救急搬送されたことを疑問に思わない。
普通に話をしていて、救急搬送されるでしょうか?

このような判断しか出来ないことが、やはり大阪の労災認定率の低い原因ではないでしょうか。
今後、さらにこの事案で大阪労働局と交渉を持つ予定です。

一方、この事案の被災者には支援してくれる労組と同僚がありました。
労組は面談は録音しておくように、30分で退席してかまわない、
あとは労組で何とかする、とアドバイスしていました。
その録音データが認定の決め手となりました。
また面談が長いことを心配して会社に戻ってきた同僚が
救急車を呼んで病院へ付き添ってくれました。
こういった支援があってこそ、勝ち取れた認定ですね。

また全国労働安全衛生センター連絡会議厚生労働省交渉が行われます。
厚生労働省精神障害の労災認定率が上がるようさらに要請をしていきます。