子どもにも大人にもつらい、いじめ

大津の中学校のいじめ自殺事件について、連日報道されています。
日々、新しい情報が加えられ、情報源は多岐に渡り、
真実かどうか精査されずに憶測まで飛び交っている状態ではないでしょうか。
警察が動いてからは、警察の捜査上の情報と思われるものまで報道され、
一般の人はとにかく怒りや悲しみをあおられる状況が続いています。
警察が調べたらしい情報が、マスコミに流されるのはいつものことですが、
今回のように「いじめ」というデリケートな問題を扱うにあたって、
この情報の垂れ流しには危機感を感じる方も少なくはないでしょう。
それは余談ですけど。

私がこの件で感じるのは、とにかく、学校と教育委員会
「いじめ」というものを理解していなかったのではないかということ、
最初から解決よりも守りの姿勢、意識的にしろ無意識にしろ、
とにかく保身に走ってしまっているということ。
「いじめ」か「けんか」か、あるいは「ふざけていただけ」とか、
区別するのは難しいのでわからなかった、とか
言い訳にされているのが非常に悲しいです。
「いじめ」はふざけていたとしても、
被害者が「いじめ」と感じれば「いじめ」です。
自殺した中学生は、先生に尋ねられても「大丈夫」と答えたといいます。
つらいと感じていても、「いじめられている」とは
恥ずかしかったり、心配をかけたくなかったり、
いろんな感情に縛られて誰にも言うことができなかった。
いじめられた人が感じる、
辛い気持ち、悲しい気持ち、劣等感とか、自信が持てなくなることとか、
そういうことをきちんとわかっていれば、
いくつもあったいじめの兆候を見逃しはしなかったと思います。
体育祭での出来事も「ふざけている」というにしては
エスカレートしていると感じられますし、
集団になると歯止めがかかりにくく、ツイやりずぎてしまうというのを
学校の先生がわからなかったんでしょうか。
そして自殺後の対応のひどさ。
真実の追究よりも、情報をとにかくあまり出さずに、保身に従事したこと。
正確な放射線量を不安をあおるからという理由で住民に知らせない国と
共通性をとても感じます。
情報を全て出すという判断はまず前提として存在しないのです。
行政はいいかげん、とにかく情報を出さないようにしようという体質を変えてほしい。
わたしのこの判断もマスコミの情報に基づいているので、
間違っているのかもしれませんが。
もうひとつ、気になるのはいじめたとされる少年3人。
今も「いじめ」ではないとして争っています。
この、最悪の事態を引き起こしてしまったかもしれない子どもたち、
裁判でいじめていないとして争うこと、
連日マスコミに事件が取り上げられ、ネットに実名が晒され、
飛び交う様々な言葉が彼らにも届いているでしょう。
このようなことになる前に、
彼らを止めてあげるのは大人の役目だったのではないでしょうか。
いじめ・ハラスメントについての講演をすると、
そのつもりがないのにうっかりハラスメントに当たることをしてしまった場合、
ハラスメントのつもりはなく、してしまった場合はどうするかと
たずねられることがありますが、その答えはわかりますか。
やってしまったり、指摘されれば、
素直に謝罪して再度しないように気をつけることです。
それを教える大人はいなかったのでしょうか?
事件後「いじめ」ではないと争うのではなく、
彼らの引き起こしたことを一緒に引き受けて、
心ケアをして、これからのことを考えて、こころを成長させてあげる手伝いをする
しっかりした大人が必要だったんではないでしょうか?
彼らは、これからどんな大人になるのでしょうか。
いけないことをいけないと教えてもらえず、裁判でいじめていないと争って、
その後、どんな人生を歩むのでしょうか。

わたしはこのブログでご存知のとおり、大人のいじめ問題に取り組んでいます。
大人のいじめも非常にたちが悪いです。
学習会でお呼びした御輿久美子先生もおっしゃっていましたが、
加害者は悪かったと思っていない人が多いです。
訴えられても、何が悪いのだと。
何を言われているのか理解できないので、反省することができません。
過労自殺のあったワタミの社長も「労務管理できていなかった認識はない」
とつぶやいておりましたね。
この話は2/23のこのぶろぐでもふれましたけど。
http://d.hatena.ne.jp/yokito5656/20120223/1330010065
アメリカやヨーロッパはもっと広い枠組みでこの問題を捉えて
「職場の暴力」ととらえ防止の取り組みを進めています。
身体的暴力だけでなく、あらゆる脅威、ハラスメント、破壊的な振る舞いなど
をこの概念に含んでいます。
そして監督機関を定め、防止ガイドラインを作成しています。
いじめを個人の問題として、全体的な対策が取れていない日本。
みなさん、いじめは子どもだけの問題ではありませんよ。
あなたはいじめを止めてあげられる大人ですか?
いじめをしない、あるいはしてしまっても反省できる大人ですか?
さて、えらそうなことを書いている私には何ができるでしょうか。
このブログを含め、できるだけのことを。