長時間労働、企業の大罪

先日、労災の民事損害賠償裁判の判決がありました。
以前にこのブログでふれたMさんの裁判です。

http://d.hatena.ne.jp/yokito5656/20110713

Mさんの仕事は主に土木工事の現場監督、
現場仕事を終えた後に事務所に戻って事務処理を行うため
残業をするのが当たり前の職場でしたが
それに加えてISO認証をとるための作業などが重なり
月に残業のみで220時間にもおよぶ状態になりました。
その結果26歳で心筋梗塞を起こし、手術して命は助かったものの
心臓機能の低下のためにはげしい運動は出来ず、
一生、食事制限をして薬を飲み続けなければならない身体になりました。

判決は、長時間労働をさせたことについて
被告の会社側は、何ら有効な対策を取らず、
事業主の責任を果たしていなかったとしました。
この部分については全面勝訴でした。
しかしながら、裁判所はMさんの実際の平均賃金を採用せずに
同年齢の賃金センサスを使用し大幅に補償額をさげました。
Mさんの平均賃金は膨大な量の残業のために倍に跳ね上がっていました。
また、本人の過失も2割としました。
その結果、判決額は請求のわずか3分の1ほどになりました。
ここからは私見ですが、裁判所は単なる紛争処理機関に成り果ててしまったのではないか
と感じました。
なるほど、法に基づいて、紛争を解決することは大事です。
しかし、それは双方の妥協できそうな補償額を決めて、
原告にはとりあえず少なくても補償がもらえればいいでしょう、
被告には額が少なくなったのでこのくらいならさっさと払えるでしょうと
それでいいのでしょうか。
少なくともMさんのケースは
圧倒的に被告の会社に非がありました。
社長は長時間労働をさせたのみならず、パワハラを行い
最後にはMさんを解雇しています。
先日のワタミ過労自殺のケースといい、
企業による働かせすぎは犯罪的行為だと思います。
それにたいして行政はあまりに何もしていません。
無制限な長時間労働が出来るような36協定を見過ごし、
死者が出ても企業を指導して終わりです。
労働基準監督署には実は労働基準法違反に関して
逮捕権があります。
ほとんど行使されたことはありませんが
企業の責任者を逮捕するぐらいの厳しい処置を行って欲しいです。
Mさんの裁判もそう考えると
裁判所はもっと厳しい判断をするべきであったのではないでしょうか。
Mさんの平均賃金が高額となったのは、会社がそれだけ働かせたためですし
負けてあげる必要はないはずです。
確かに高額の判決を出しても被告が支払えない場合もあるでしょう。
しかし最初から裁判所は和解協議でも被告が支払えそうな額で決めよう
という態度が明らかでした。
裁判所はたかが民事紛争のひとつ、としか考えなかったのかもしれませんが
もっと社会的意義に基づいた判断をするべきだったでしょう。
過重労働の問題は、重大な問題です。
今、就職活動中の若者にとってもです。
就職が難しいこと、正社員になるのが難しいこと
それを逆手にとって長時間労働が強制される
その流れを変えるのは大変なことですが
必要なことです。