これってパワハラでしょうか?

先月全国一斉ホットラインを行いましたが、2日間で約240件もの相談が寄せられました。
私も2日間事務所に詰めて電話対応しましたが、多くはパワハラやいじめの相談でした。
今回、電話を取っている中で思ったことがあります。
複数の方に
「これってパワハラでしょうか?」
とたずねられました。
「これ」の中身はいろいろで、
上司からの仕事の妨害であったり、悪口であったり
明らかな不当な即日解雇というものまでありました。
解雇の方には、「パワハラ」かどうかどころか明確な法律違反であることを説明しました。
大学の教職にある方が上司である学部主任から、専門でない教科を担当させられたり
学会への出席を妨害されたりしているということで、
こちらも明らかなアカデミック・ハラスメントでしたが、
パワハラ」にあたりますか?と聞かれるのです。
法的に違反かわからなくても不当であると感じることを
パワハラ」ということばで理解しようとしているのでしょうか。
そして「パワハラ」であれば自分はなんらかの対抗手段を講じても良いよいのではないかと、
パワハラ」という概念を、
自分の正当性を証明するためや対抗する手段をとるために
必要としているのではないでしょうか。
職場では仕事だから仕方ないと少々不当なことも我慢してやり過ごしてきて、
自分を守る当たり前の感覚まで鈍くなってしまっているのではないでしょうか?
パワハラ」と認識することによって次の一歩を踏み出せると言うのなら、
厚生労働省が先日「提言」を出し、「パワハラ」の定義を決めたことは
大変意義があることでしょう。
厚生労働省の「職場のパワー・ハラスメントの予防・解決に向けた提言」
は以下で読むことが出来ます。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000255no.html
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000255no-att/2r9852000002560k.pdf

またこのHPに提言のポイントが簡単にまとめられています。
合わせて「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキンググループ報告」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000021i2v.html
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000021i2v-att/2r98520000021i4l.pdf
もご覧ください。

何年も前から厚生労働省に防止ガイドラインを作れと要求してきて、
やっとパワハラの定義らしきものが出来たことは歓迎しますが、
私たちはやはり早急に「指針」が必要だと思いますし、
最終的には法令で禁止されるべき行為であると考えています。
そこで今回の「提言」に対してカウンターレポートを作成しました。

職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議カウンターレポート
http://ijimemental.web.fc2.com/enntakukaigikauntaarepooto.pdf

厚生労働省の策定した提言は、対策を講じるべき企業が受け入れやすいないようにするために
結局どうしていじめ・嫌がらせ問題が起こっているのかという点をあいまいにしています。
いじめ・パワハラがはびこる背景には、
同じ職場で正社員と派遣労働者、嘱託労働者、有期雇用の労働者などが混在し
差別的な待遇が当然のごとくあることなどの構造的な問題や
企業が労務管理まで外注し、人員を極限まで減らして過重労働を課していることなどがあります。
それを放置した対策には限界があるでしょう。
カウンターレポートでは国、自治体、労働組合が取り組むべきこととして
以下のようにまとめました。

【国、自治体が取り組むべきこと】
パワー・ハラスメントなどの行為は相当前から問題になっていたのであるが、
取り組みが相当遅れることとなっている。
これまでは被害を受けた個人、その周りの家族、同僚、上司、労働組合、支援団体、
あるいは一部の企業などが手探りで解決を図ってきた。
この状況を解決に導くには、「これら行為をなくす」との国の明快な方針が必要である。
すでにベルギーやフランスなど、法令化によって防止を試み成功している国があり、
それは日本でも可能であると考える。
解決に導くためには具体的に以下の取り組みが必要である。
1.今回の提言を踏まえ、事業主、労働者が取り組めるように、
「パワー・ハラスメント防止ガイドライン」を早急に作成すること。
2.専門検討委員会を参集し、パワー・ハラスメント行為の防止について
労働安全衛生法をはじめとする労働諸法規の改正の可能性について検討すること。
3.国の施策のみならず、各自治体が地域の現状に合わせた対策を労使団体とともに講じること。

労働組合が取り組むべきこと】
職場で労働組合の力が不足していることが、問題の発生はもとより、
対応が不十分となり、被害者の泣き寝入り、行政機関等への相談激増という結果として表れている。
以下の取組みが必要である。
1.ナショナルセンター、産別、単組の各レベルにおいて、
パワーハラスメントをなくすための運動方針を確立すること。
2.相談体制を企業任せにすることなく、労働組合独自の窓口を設置すること。
使用者には安全配慮義務がある。しかしそれを監視し、問題点を指摘したり、
解決の解決方法を提案したり、助言するのは労働組合の任務である。
労働組合はその任務を果たさなければならない。

さて、厚生労働省パワーハラスメント対策、
平成24年度は実態調査を続けるということになっています。
わたしたちも法制化にむけて活動を続けます。