長時間労働の常識

以前にもこのブログで少し触れましたが、厚生労働省
精神障害の労災認定基準の改正のための専門検討会を行なっています。
9月8日の第9回検討会でこれまでの議論を踏まえた改正案のたたき台がだされました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001nhz9.html
検討会としての議論はこの日で終了となり、次回に報告書案が出される予定です。
1999年にこの判断基準が作られてから、1度、負荷評価の見直しがあったくらいで
今回がはじめての大規模な見直しとなります。
検討会開催当初の目的は、主に審査の迅速化にありました。
1件の審査に何ヶ月もかかり、このところ早まってはいたものの、
平均8.7ヶ月かかっていました。
2009年度から精神障害についての労災請求件数は1000件を超えています。
今回の改正では、出来事の負荷評価があきらかに「強」と考えられる場合は、
専門医による合議にかけずにそのまま業務上外の決定をするという案になっています。
また複数の出来事があった場合の評価の仕方も検討されましたが、
論点を見た限りでは、これまで常に問題となってきた強度Ⅱ程度(改正案では「中」)が
複数あった場合、関連している場合は1つの出来事として評価、
関連しない場合はそれぞれを評価して「強」になるか判断するとしています。
しかし、その中に「弱」があれば「中」にしかせず、
「弱」が複数あれば「弱」となっており、
これまで私たちが主張してきた出来事が複数あった場合は、
それを過重ととらえてほしいという考えは取り入れられませんでした。
出来事の負荷評価については、今回項目がかなり変更になったり、
セクシュアルハラスメントについても新たな評価が取り入れられたりして
かなり変更がありました。
長時間労働についても、一定の評価がとりこまれました。
まず、それがあれば、即評価を「強」として労災認定する「特別な出来事」として
1ヶ月に160時間以上の時間外労働、と時間数を明確化しました。
また、「中」の出来事の前後に月100時間の時間外労働があったり
「弱」でも恒常的に100時間の時間外労働をしている場合は「強」と判断、としました。
また月80時間以上の時間外労働がある場合、
2週間連続勤務した場合を「中」とするとしましたが、これが「強」になるには
2ヶ月の平均120時間以上、3ヶ月の平均100時間以上、
連続勤務1ヶ月とたいへん高い基準としました。
過労死ラインと呼ばれる「脳・心臓疾患」の労災認定基準の長時間労働
月平均80時間以上、直前1ヶ月では100時間以上の時間外労働があった場合としています。
それとくらべて、今回のこの基準をどう思われますか?
脳・心臓疾患なら労働時間数のみで即労災認定されるのに、
精神疾患であった場合、認定されないということになってしまいます。
この点について、IMCと全国労働安全衛生センター連絡会議では
要望書を検討会に提出しました。
http://ijimemental.web.fc2.com/youseisyo11.08.29.pdf

精神障害の労災請求が年に1000件以上といっても、それは氷山の一角にすぎず、
実際には病状が重いためとても手続きを取れなかったり、
負荷になった出来事の証明が難しいためあきらめたり、
労災請求できるということに思いいたらなかったりした方が
たくさんいると思われます。
しかし、いじめ・メンタルヘルスの問題は労災認定されれば
解決するというものでもありません。
厚生労働省のいじめ対策はまだまだこれからです。

いじめメンタルヘルス労働者支援センター活動報告でも
9月8日の検討会について書いています。
こちらもどうぞ。
http://ijimemakenai.blog84.fc2.com/blog-entry-92.html

さて、はたして当事者の役に立つのか
ゆったり働こうキャンペーン
http://d.hatena.ne.jp/yokito5656/20110730/
キャンペーンで、つながっていけたらと思います。