セクハラを生む土壌

昨日、大阪地裁で判決がありました。
朝日新聞は以下のように報道しています。
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201111050008.html

障害ある女性に性交渉強要、賠償命令 JR西社員
2011年11月5日

 JR西日本の男性社員に性的暴行を受けたとして、契約社員の女性(37)=兵庫県=が男性と
JR西に計1650万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が4日、大阪高裁であった。
坂本倫城(みちき)裁判長は請求を棄却した一審・神戸地裁龍野支部判決を変更し、
男性に計100万円の支払いを命じた。JR西の責任については退けたため、
女性は上告を検討している。

 判決などによると、女性は脳性小児まひの後遺症で言語や四肢に障害がある。
2006年2月にJR西の障害者雇用枠で入社し、翌年11月に職場の日帰り旅行をした帰りに
当時の上司の男性からホテルで性交渉を強要された。

 控訴審判決は「被告の男性は重い障害で抵抗が困難な女性を性欲のはけ口とした」と指摘。
一方、旅行後も性交渉を強要されたとする訴えについては
「女性は男性に愛情を表すメールを繰り返し送っており、一時的な恋愛関係になっていた」として退けた。

 女性は、被害申告を受けたJR西が適切な対応をとらなかったとも主張していた。
これに対し判決は「事情を聴いた別の社員が女性に非があるかのような不適切な発言をした」と
指摘したが、性的被害は認められないと判断したJR西の調査は入念なものだったと判断した。


とても痛ましい事件です。
男性ばかりの職場で、彼女はたった一人の女性労働者、しかも障害者雇用でした。
その中で1人の男性社員が、女性をホテルに連れ込み強姦し、しかも繰り返し関係を強要しました。
判決では、いわゆる迎合メールをもって恋愛関係であったとし、わずか100万円の損害賠償を命じたにとどまりました。
セクシュアルハラスメントの被害者は、圧倒的に相手より弱い立場におかれています。
そこで、しばしば、被害に再度あわないように、あるいは被害を軽くするために、
相手に迎合するメールを送ったり、そのような態度をとらざるを得ない場合があります。
これまでも、常にこのことが裁判などで問題になってきました。
今回も、そいった被害者への理解がされず、大変残念に思います。
また、裁判で証拠として出されたJR西日本の職場の実態が
環境的なひどいセクハラが日常化していたという点についても注目するべきです。
職場での日常的な専門用語を、性的な単語に置き換えて使用するということが行われていました。
そのため、会社側が研修でこのような言葉を使用しないように、というリストを作って配っていたのですが、
それがとんでもない単語のオンパレードでした。
そのような職場環境が、このような事件が起こる土壌となったし、
また被害を訴えてからも、加害者を断罪することなく、
女性に対してセカンドハラスメントを行い、精神的苦痛を増大させました。
こういった事実が、まだまだ正しく認識されない司法判断、とても残念に思います。
彼女が訴訟に訴えるまでの勇気を持ったこと、とてもすごいことだと思います。
それまでの過程も困難と苦痛に満ちていたでしょうし、
訴訟になってからも事実の証明に、大変な苦労をされ、
かつ精神的な辛さはさらに強かったでしょう。

事件の問題は、加害者個人にとどまりません。
職場自体のあり方、雰囲気も重要な問題です。
だから、セクシュアルハラスメントパワーハラスメントをなくすには、
事業主の自覚が重要なのです。
事業主が自覚を持って対策を取るべきですし、
そのために行政がしかるべき指針などを設けることも
一刻も早く取り組まなければならない課題です。

詳しくは
里美ドットコム(里美さんの裁判を支える会)
http://satomi-heart.cocolog-nifty.com/blog/